鉱物シリーズvol.2 「エメラルドの話」

2023.01.16

みなさんこんにちは! あかあおきいろ、むらさきのリスです♪

相変わらず初めの挨拶迷走中です!

最近寒くなってきましたがいかがお過ごしでしょうか? わたしは毎日寒すぎて通勤中にキーンと頭が痛くなります。アイスクリーム頭痛(?)でしたっけ、余談ですが、あれを予防するためにはゆっくり食べるというのが一番いいそうです。自転車もゆっくり漕げばいいのでしょうか……?(それはなんか違う気もする)

さて、今日のお話はタイトルにもある通り「エメラルド」について。

これ一応鉱物シリーズものなので、前回の「ルビーとサファイアについて」を読んでからのほうがわかると思います。まだ読まれてない方がいればぜひに。

ポケットモンスターのゲームに、「ルビー」「サファイア」っていうのがあるじゃないですか。確か第3世代? 赤青、金銀の後のやつです(間違っていたらすみません)。そのあとに、「エメラルド」っていうのが新たに発売された記憶があります。

……記憶があいまいなのでもう一度調べてみました。

 

現在に至るポケモンバトルの土台を作ったタイトル

ゲームボーイアドバンス ポケットモンスター ルビー/サファイア (2002年11月21日発売)

 

だそうです。20年前……! 月日の流れに驚きます。ちなみに、エメラルドはというと、

 

ゲームボーイアドバンス ポケットモンスター エメラルド (2004年9月16日発売)

 

でした。ルビサファから2年後ですね。今回はAmazonさんのこちらの記事から引用しました。ポケモン好きの方、面白かったのでぜひのぞいてみてください。

さて話を戻します。私は地学科でして、さらに岩石鉱物学研究室出身です。前回の記事を読んでもらえばわかるのですが、「ルビー」と「サファイア」はおなじ鉱物です。

ポケモンの話題が出るたびに、つねづね「ルビー」と「サファイア」の中に「エメラルド」を混ぜないでくれ! って思ってたんです。でもね、この間、化学の授業中にアルミニウムが出てきて。それで生徒とそんな話になりまして。

「ルビーとサファイアって実はおんなじ鉱物なんだよ」

という話から、

「だからポケモンはルビサファだったのか~」

「でも、エメラルドって何からできてるの?」

という質問を受けました。

 

「……何からできてるんだろう……」

 

なんとなくしか知らなかったので、これを機に調べてみようと思います! それではレッツゴー!!

★エメラルドの組成

エメラルドは「緑柱石(ベリル)」と呼ばれる鉱物からできています。ケイ酸塩と呼ばれる鉱物に分類され、組成式はBe3Al2Si6O18です。Be:ベリリウム、Al:アルミニウム、Si:ケイ素、O:酸素からなる鉱物。こうみるととても複雑にみえますが、イオンに分けて考えるとわかりやすいです。

O2-が18個なので、この組成式の中では―2×18=-36となっています。そこに、Be2が3個(+2×3=+6)Al3が2個(+3×2=+6)、Si4が6個(+4×6=+24)です。+6+6+24=+36、きちんとプラスマイナスゼロのイオン結晶になっていることがわかります。

このように2種類以上の金属イオンからなる塩のことを「複塩」と呼びます。複数の金属からなる塩、略して複塩ですね。見られる場所は、花崗岩の中が多いそうです。花崗岩は石英や長石を多く含む白っぽい石です。今度この岩石たちについても記事書こうかな。需要あります?

★緑柱石がもとになっている宝石

じつはこの緑柱石、純粋なものは無色透明です。そこに不純物として微量元素が入り込み美しい色に発色します。緑色のものが「エメラルド」、薄い青色のものは「アクアマリン」、桃色だと「モルガナイト」と呼ばれる宝石として有名な鉱物です。前回同様、それぞれに何が含まれているのか説明していきます。

この強烈な緑色は,微量のクロム(Cr2O3として1%内外)によります.もっとも最近は,微量のバナジウムで緑色に発色する「エメラルド」も知られていますが.

誕生石の鉱物科学 ― 5 月 エメラルド ― より引用

 

つまり「エメラルド」はクロムCrやバナジウムVによってあれほど美しい緑になっていることがわかります。「アクアマリン」は薄い青緑なのでFe2、「モルガナイト」は桃色なのでMnかな? と予想を立てたところ、正解でした! イオンの色やそのイオンからなる化合物の色をある程度覚えているとこうして予想も立てられます。特にMnに関してはそもそもが淡桃色、化合物はたいていピンク系の色をしています。菱マンガン鉱などは鮮やかな桃色をしているのでぜひリンク先からご覧ください!

★エメラルドの由来

ルビーサファイアと同じように、エメラルドも色で見分けられていたんでしょうか?

エメラルドの語源は、サンスクリット語で「緑色の石」を意味する「スマラカタ」にあり、ギリシャ語では「スマラグドス(smaragdos)」から変化。そして現在の、「エメラルド(emerald)」になったといわれています。和名は「翠玉(すいぎょく)、緑玉(りょくぎょく)」。

ジュエリーstory » エメラルドに込められた意味とは より引用

やはり、色で分類された名称でした。ちなみに緑柱石のベリルというのはどこから来たのか、含まれているベリリウムBeから? と思ったのですが、実は逆で、ベリルに含まれているからベリリウムだそうです。調べていくと面白い事実がたくさん出てきますね……!

 

★エメラルドが出てくるおはなし

さてさて、ここまでエメラルドについてのお話をしてきましたが、やはりルビー、サファイアとエメラルドは特に関係なく、宝石? としてのつながりしかなさそうです。酸化アルミニウムとケイ酸塩ですし。かかわりあるとすればベリルの中に若干酸化アルミニウムが含まれていることですかね。

調べているうちに、エメラルドの原石、緑柱石がさまざまな物語に登場していることがわかりました。

有名なのはコナンドイル作『シャーロック・ホームズの冒険』の『緑柱石の宝冠』(The Adventure of the Beryl Coronet)です。もともとヴィランや悪役好きの私です、個人的には怪盗アルセーヌルパンのほうが好きなのですが、ホームズがワトソン博士と謎を解決していく探偵物語はとても面白くて小学校の頃に没頭していた記憶があります。

また、皆さんよくご存じスタジオジブリの『耳をすませば』のあるシーンに緑柱石が出てきます。主人公の雫が聖司のおじいさんに励まされるシーンです。

物語を書くと決意したはいいけれど自信のない雫に、おじいさんは「雲母片岩」という石を見せてくれます。その美しさに見とれる雫にその鉱石が「エメラルド」の原石「緑柱石」であることを教えてくれます。

「雫さんも聖司もその石みたいなものだ。まだ磨いてない、自然のままの石。私はそのままでもとても好きだがね」

「しかし、ヴァイオリンを作ったり、物語を書くというのは違うんだ」

「自分の中に原石を見つけて、時間をかけて磨くことなんだよ。手間のかかる仕事だ」

 

こうして「原石」である雫の背を押してくれるのです。この言葉が私はすごく好きで、というのも「エメラルド」はかなり傷つきやすく傷のないものはとても稀なのです。

夢というのは美しくもあり残酷なものでもあります。時には失敗し、傷がつくこともあります。けれども、エメラルドはそれがまた美しい輝きになることもあります。そうして宝石として育っていく、そんな風に例えられた夢を追う努力のお話は、きっと誰しもどこか重なるところがあるのではないかと思います。

古くから宝石はこうして物語の中に登場し、さまざまな形で人々を魅了してきました。鉱石について勉強すると、また違った意味で物語がより味わい深くなるのではないでしょうか。

今度はジブリ編もやりたいなぁ……なんて思いつつ。話があっちこっち行ってしまったので、この辺でおしまいにします。

それではみなさま、おあとがよろしいようで。

むらさきのリスでした★

 

 

 

 

 

 

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Writerむらさきのリス

歴史好きの理科教員。三度の飯よりアニメが好き。THEインドア。アニメを見ているかマンガを読んでいるかKPOPを聴いています。